最近の研究
電気伝導性と磁性が切り替わる純有機物質の開発
水素結合を制御することによって電気伝導性と磁性が同時に切り替わる純有機物質を初めて開発しました。
この切り替えは、熱による水素結合部の重水素移動と電子移動の相関に基づく新しいスイッチング現象であることを明らかにしました。
(重)水素移動と連動したスイッチング機能を有する新しい低分子系純有機素子・薄膜デバイスの開発につながると期待されます。
“Hydrogen-Bond-Dynamics-Based Switching
of Conductivity and Magnetism: A Phase Transition Caused by
Deuterium and Electron Transfer in a Hydrogen-Bonded Purely Organic
Conductor Crystal”,
A. Ueda*, S. Yamada, T. Isono, H. Kamo, A. Nakao, R. Kumai,
H. Nakao, Y. Murakami, K. Yamamoto, Y. Nishio, and H.
Mori*
J.
Am. Chem. Soc., 136, 12184 (2014).
JACS
Spotlights(編集者が選ぶ注目論文)にも選出されました。
物性研究所プレスリリース
量子スピン液体状態を示す純有機物質の発見
当研究グループで独自に開発されたS=1/2スピン二次元三角格子を有する純有機伝導体κ-H3(Cat-EDT-TTF)2が
量子スピン液体状態を示すことを明らかにしました。
本物質は、これまでの系と異なり、S=1/2スピン二次元三角格子が水素結合によって繋がれています。この水素の揺らぎによって生じる有機分子上の
電荷の揺らぎが、スピンの固体状態を不安定化させる、つまりスピン液体状態を安定化していると説明できます。
“Gapless Quantum Spin Liquid in an
Organic Spin-1/2 Triangular Lattice κ-H3(Cat-EDT-TTF)2”,
T. Isono*, H. Kamo, A. Ueda, K. Takahashi, M. Kimata, H.
Tajima, S. Tsuchiya, T. Terashima, S. Uji, and H.Mori*,
Phys. Rev. Lett., 112,
177201 (2014).
物性研究所プレスリリース
金属状態を示す純有機単一ユニット型電気伝導体の発見
単一成分からなる有機物として世界最高の室温伝導度(19 Scm-1)を持ち、
約1万気圧というこれまでで最低の圧力下で金 属状態となる純有機伝導体の開発に成功しました。
この有機物質は、+0.5価に部分酸化された2個の有機分子が強く水素結合した高対称性の分子ユニットが、
自己凝集して2次元伝導層を形成している新しいタイプの高伝導体であることを解明しました。
“Hydrogen bond-promoted metallic state
in a purely organic single-component conductor under pressure”,
T. Isono, H. Kamo, A. Ueda, K. Takahashi, A. Nakao, R. Kumai,
H. Nakano, K. Kobayashi, Y. Murakami, H. Mori,
Nat.
Commun., 4: 1344 (2013).